オープン化を踏まえたクラス作り

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    @共有化する意義
    クラス作りの際、毎回基本にしていたことがある。
    それは様々な問題が起きる度にオープン化して解決に至った、
    という事である。

    学級がスタートした4月、
    いろいろな考え方や個性を持った児童が数十名集うのだから、
    些細なことで考え方が異なったり、軽い“衝突”があったりするのは、
    当然な事である。

    対象児童だけを呼んで解決を図るのも一つの手であるが、
    もともとクラスは一つのコミュニティである。
    学校生活の中でクラスはみんなが集う場であり、
    常に集団生活を基本としている。
    そんな母体であるクラスは常に平穏でありたいものだ。

    こういったクラスにある空気とは、
    親近感、安心感、充実感、信頼感、そして存在感。
    一体感を醸し出すクラスは、
    これらの基本が大事にされているのだ。
    そう考えれば、様々な問題が発生する度に、
    全体で共有していくことが不可欠である。

    問題をオープン化するということは、
    児童意見を基本に解決を図っていく、という事である。
    そのためには旺盛な意見が飛び交うクラスがベースであり、
    話し合いを基本としたが授業が常に求められている、
    とも言えるだろう。

    そういったクラスが前提である。
    まずは基本的な事例を挙げてみよう。
    A全員で見つめる
    ○事例1
    4月早々、何処のクラスでも起きる問題である。
    S「男子ばかりボールを使って、
      女子に貸してくれません!」
    T「あなたたちはどうしたいのかな」
    S「一緒に遊んでもいいけど、男子のボールは怖いから…」

    こういった問題が発生したとき、
    何処のクラスでも対象児童だけを呼んで、
    加害者側を叱ったり、解決方法を探ったりするのが常だろうが、
    そういう形は殆ど取らない。
    クラスの中で起きたトラブルであるわけだから、
    クラス全体で共有して、解決を図るのだ。
    そうすれば今後同じ事が起きなくて済むからである。

    この後、早速臨時の学級会を開いた。
    T「議題はボールの使い方です。
      今は男子が中心に使っていますね。
      みんなが納得する使い方を考えます。
    今日だけは先生が議長をします」
    T「まずはいろいろな意見を出して下さい」
    S「男子だけボールを使うのは,
    良くないと思います」
    T「今の意見、男子は分かりますか」
    S「はい!」
    S「女子も男子も一緒に遊べるようにすれば良いと思います」
    T「男子と女子には力の差がありますね。そこはどうしますか」
    S「男子が加減を付けて投げればいいと思います」
    S「女子がいるときはボールを譲ってもいいと思います」
    S「女子の中でも強く投げる人がいるから、
      そういう人には強く投げてもいいんじゃないかなあ…」
    T「いろいろな意見が出てきました。改めてクラスのめあてを思い出して下さい。
      結局、休み時間で一番大事なのは何だと思いますか」
    S「仲良く、楽しく遊ぶことです(意見多数)」
    T「では今日から…という事にしましょう」



    ○事例2
    5月早々、校内研究授業の際の事例である。
    T「この時間は他クラスに行かなければなりません。静かに自習できますか」
    S「はい!(全員の声)」
    そう話して、暫くして戻ってきたら、
    数名の男子が立ち歩いていた、という声が入ってきた。
    些細なことであるが、年度が始まったばかりなので、
    問題として提起することにした。

    前述通り、約束を破った児童だけ指導するのも良いが、
    全体共有を図る。
    T「先生のいない時間、立ち歩いていた人、立ちなさい」
    T「今、2名が立ちましたが、これでいいですか」
    S「違います。あと一人います!(多くの声)」
    T「ちゃんと座って学習していた人、立っていた人を指さしてもいいよ。
     もう一度言います。立ちなさい」
    T「立っている3名、何か理由があったのなら言いなさい」
    S「…ありません」
    T「次回からちゃんと自習できる人は座りなさい」
    S「(3名とも着席する)」

    怒ることも叱ることもしないで2分で解決する。
    なお次回以降は離席が無くなるので、
    以前守れなかった児童を中心に誉め讃えていくのだ。



    4月、出会いと共にクラスの在り方を児童と考える。
    様々な意見や考えを出し合い、
    より良い意見を取り入れていくことが求められる。
    遠慮せず、良識ある考えが飛び交うクラスを目指すのだ。

    そもそも意見を述べるのに躊躇う必要が無いし、
    全員の目や耳がある場で確認するので、一人一人に責任が伴う。
    だから「指さし」程度で仕返しが発生するなどあり得ない。
    目的が明確で、クラスという母体を最優先するから、
    何が一番重要なのか理解しているから、
    解決が早いのだ。


    B良識ある声を引き出す
    実はここが本題である。

    問題を共有化、オープン化するにはクラス作りがベースである。
    わめき声、叫び声、横暴な考え方、
    そして無秩序な嘘や虚言・力関係があっては、
    クラスは始まらない。
    母体であるクラスには、次の4つが求められる。
    ┌───────────────────────────┐
    │ 1.良識ある意見が飛び交う │
    │ 2.自由に闊達に意見が言える土壌がある │
    │ 3.イニシアティブを取る児童が存在する │
    │ 4.全員が監視役であり、全員で一つの社会を形成している。│
    └───────────────────────────┘

    これらを育てていくために、4月からのリーダー育成が不可欠なのだ。


    何度も行ってきた例を挙げながら、説明していきたい。

    学級経営は常にリーダー候補を探すところから始めていた。
    4月最初の2.3週間程度で個々の児童の特性を把握し、
    GW前後に初の席替えを実施する。

    この回だけは各班にリーダーを配置してから席替えする。
    児童数が40名程度の時代の生活班は8つ、
    つまり8名のリーダー候補を選定するのが条件である。
    ※別紙「リーダーの育成」参照

    ズバリ書くが、この8名は殆どが女子である。
    それは物事の考え方や判断力、そして統率力を踏まえると、
    男子より遙かに女子の方が安定している。
    男子が上なのは行動力と腕力ぐらいで、
    生活年齢だけで判断すれば、男子の方が遙かに幼い。
    そしてこの幼稚さと力関係が問題行動に繋がる事が多いので、
    共有化しながら良識な意見で詰めていく必要があるのだ。

    女子は良識のある意見で、
    イニシアティブの取れる児童が多い傾向にある。
    そういった児童の声を取り入れていくと健全なクラス経営に繋がる。
    そしてそういった言動を学んでいくから、
    徐々に男子から稚拙な行動や意見が消えていき、
    時期を追う毎に男子も育っていくのだ。

    正当な意見で風通しを良くし、
    そういう声を尊重していけば、
    問題が発生してもすぐに解決に至ることが可能になるのだ。

    もう一度言おう。
    クラスが母体であり、クラス作りこそ要である。
    安心安全なクラスを創るには、
    教師と児童がタッグを組んでいくことが求められるのだ。

    旅館神仙は神話と伝説のいきづく郷、高千穂にございます。
    高千穂の美しき自然に包まれて、お客様の心と私共の心が出逢う時。
    この最初の瞬間を一番大切にしております。


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